はじめに
「焼き鳥屋の経験なんて家庭料理に関係あるの?」と思うかもしれません。
でも、実際に10年間店を切り盛りしてみると、日々の料理に直結する知恵が山ほどありました。
仕込みの工夫、火加減の使い方、味付けの考え方…。
今回は、その中から「家庭でもすぐ使えるコツ」を5つ紹介します。
コツ1:水分管理で味は変わる
肉や野菜の「水分」をどう扱うかで、味も食感も大きく変わります。
焼き鳥屋では、串を打つ前に必ず肉や野菜の余分な水分を拭き取っていました。これをサボると、焼いたときに水分が蒸発して旨味が抜けたり、縮んで見た目も悪くなります。
家庭でも同じ。鶏むね肉を焼くときは、表面の水気を拭くだけで香ばしさが全然違う。さらにブライン液(塩・砂糖・水で作る漬け液)に数時間浸ければ、しっとり柔らかく仕上がります。
野菜炒めも同様。洗った後にしっかり水気を切らないと、べちゃっと仕上がる原因になります。切ったあとキッチンペーパーで軽く押さえるだけで、驚くほど食感が良くなりますよ。
コツ2:味付けは「塩を先に」
味付けの基本は「まず塩」。これは焼き鳥屋時代に徹底していたことです。
塩は素材の味を引き出すベース。タレやスパイスはその上に乗るアクセントにすぎません。塩が決まっていないと、どんな調味料を加えても味がぼやけてしまいます。
たとえば炒め物。最初に軽く塩で全体をまとめてから、しょうゆやソースで仕上げると味がはっきりします。ハンバーグや唐揚げも同じ。塩で下味をつけておけば、ソースやタレの味がきちんと活きます。
プロの現場では「塩が決まれば料理は8割成功」とよく言われます。家庭でも、この意識ひとつで料理のレベルが上がります。
コツ3:火加減は「最初に強火、あとは弱火」
焼き鳥屋の命は火加減。炭火の距離を変えて、最初に強火で表面を焼き固め、その後は弱火で中まで火を通します。
この考え方は家庭料理にも応用できます。
- ステーキ → 表面を強火で焼き固め、最後は弱火で中をじんわり仕上げる
- 炒め物 → 最初は強火で香りを立たせ、仕上げに弱火で蒸らすようにするとシャキッと仕上がる
- 煮物 → 煮立たせるときは強火、その後はコトコト弱火で
「強火で決めて、弱火で育てる」——これだけでプロっぽい仕上がりになります。
コツ4:仕込みは“未来の自分へのプレゼント”
焼き鳥屋の仕事の大半は仕込みです。開店前の数時間で、串を打ち、タレを煮込み、野菜を切り揃える。ここを怠ると営業が回りません。
家庭でも、仕込みをしておくと未来の自分が楽になります。
- 玉ねぎをまとめてスライスして冷凍
- ドレッシングやタレを作り置き
- 肉を下味付きで小分け冷凍
これだけで「今日の夕飯どうしよう?」のストレスが激減します。仕事や育児で疲れていても、仕込みがあるだけで「あと一歩」でご飯が完成するんです。
コツ5:お客さん目線=家族目線
焼き鳥屋はお客さんあっての商売。料理を出すときには「食べやすさ」「スピード」「見た目」を常に考えていました。
家庭でも同じです。
- 子どもが食べやすい大きさに切る
- 洗い物を減らす盛り付けを意識する
- 食卓で手が伸ばしやすいように並べる
ちょっとした心配りですが、「食べる人がどう感じるか」を意識するだけで、家族の満足度はぐっと上がります。
まとめ
10年の焼き鳥屋経験から得たことは、意外にも「日常の料理を少し楽に、少し美味しくするヒント」でした。
- 水分を制する
- 塩を先に打つ
- 火加減は強火と弱火のメリハリ
- 仕込みは未来の自分を助ける
- 食べる人目線で考える
どれも特別な道具や技術は必要ありません。明日からすぐに家庭料理に取り入れられるものばかりです。
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